よみはぴにようこそ。 ブックレビュアーの瑠璃花です。 ついに8月に突入。夏休みも本番を迎えましたね。 夏休みは、じっくり読書が楽しめる時期です。 こんな時は、長編シリーズに親子で挑戦してみませんか。 今日、提案するのは、おなじみ『赤毛のアン』シリーズ。 実は、『赤毛のアン』って、『赤毛のアン』一冊だけで完結では ありません。『アン・ブックス』と愛称がついていて、全10巻。 ジュニア向けのものから、大人向けまで。 お子さんとママがいっしょに、それぞれに合った翻訳を読み、 感想を話したり、アンをテーマにお料理や手芸を楽しんだり。 長いお休みを活かして、読書だけで終わらない、読んだ後の お楽しみを、夏の思い出や自由研究の一環にしてみませんか?
『赤毛のアン』シリーズって、どんなお話?
プリンスエドワード島という島は、世界で一番有名で、憧れられる場所の一つでしょう。それは、美しいこの島が『赤毛のアン』の舞台になっているからです。
グリーンゲイブルズ。『緑の切妻屋根』というニックネームのついた家に、アン・シャーリーという赤毛とそばかすを気にする、話好きの少女がやってくるところから、物語は始まります。
カスバート家のマシュウとマリラは、年齢の高い兄妹で、どちらも結婚していないので、子どもがいません。農場の仕事が大変になってきたマシュウのために、二人は仕事を手伝ってくれる少年を、孤児院から引き取って、育てることにしました。
でも、やって来たのは、赤毛をおさげに編んだ、家族が出来る喜びにキラキラ目を輝かせている女の子、アン。彼女はこれから、どうなるのでしょう。
『赤毛のアン』シリーズは、今の小学校5、6年生くらいのアンがやってくるところから始まります。シリーズの終わりには、アンは50代の、賢く優しいお母さんになっていて、アンの娘、リラがヒロインになるお話も含んでいます。
子どもから大人まで、どの年代の人が読んでも楽しめるので、『赤毛のアン』だけで終わってしまうのは、とってももったいないの。
アンはいくつになっても、楽しい出来事を起こす名人だし、素敵なレディになるヒントを、私達にいっぱいくれるんですよ。
『赤毛のアン』シリーズが世界中で愛される理由
世界中で、どうしてアン・ブックスは、こんなに読まれているのでしょう。
アンが完璧なヒロインではないからだと、私は思っています。
赤毛をからかわれて、クラスメイトのギルバートの頭を、ノート代わりの石板で叩いて、先生から叱られたり、黒髪に憧れて、髪を染めたら、見るのもおそろしいような、情けない緑色にしちゃったり!
大学生になって、卒業したら結婚して欲しいとプロポーズされたアン。お相手は、ロマンティックな詩を作ってくれる理想の美青年。
彼のお母様が下宿に訪ねて来た時、よりによって、おふとんの手入れやお掃除の真っ最中!
作業用の着古したドレスに羽根枕から出た羽根をいっぱいくっつけた、おかしな格好でお友達と大慌てで応対するはめになったり。
私達もやりそうな、気持ちのわかる失敗をいくつもして、思いやりのある、賢い女性になっていく姿がいいのです。悲しい時、どうそれを乗り越えるのかも含めて。たくさん励まされます。
それにね。
読んでいるだけでお腹いっぱいになりそうな美味しいお料理やお菓子が出てきたり、今では一般的になったポプリが、早くから紹介されていたり。手芸の好きな人なら、ハンドメイドの可愛いものが一杯出てくるのも、見逃せません。
暮らし方の楽しいヒントが一杯詰まっていて、美しく、わかり易い言葉で物語が進んでゆくので、私達もずっと、アンが好きなのだと思います。
学年別!読書感想文におすすめの『アン・ブックス』
『赤毛のアン』の翻訳は、いくつか出ていますが、どれを読めばいいでしょうか。
全10巻(関連作品含む)で、アンの成長を追いながら、友情、家族、恋愛、自然への愛をテーマに描かれます。夏休みの読書感想文にピッタリの巻を、小学生、中学生、高校生別に紹介します。
小学生(4~6年生)におすすめ:『赤毛のアン』(Anne of Green Gables)
『赤毛のアン』の定番。アンを日本で初めて日本語に訳した村岡花子さんの訳です。シリーズ全巻が同じシリーズで読めるので、夏休みが終わっても、のんびり時間をかけて読み続けられるのが良いですね。
角川つばさ文庫で現在刊行中の、河合祥一郎さんによる新訳。
河合さんは、シェイクスピアの翻訳や研究でも知られた、正統派の英文学者。
最近は『ドリトル先生シリーズ』『ナルニア国物語シリーズ』等のジュニア向け新訳を手がけられています。旧訳の良いところを引き継いで、今の読者の皆さんにも響くと、どれも高い評価を受けておられます。
アンシリーズも、全巻の刊行が予定されているようで、一つのお話が、上下二冊になっています。
2025年8月現在、『アンの青春』『アンの初恋』まで読むことが出来ます。表紙はコミック風ですが、とても綺麗ですっきりした日本語で訳されていて、解りやすいですよ。
どんなお話?
11歳のアンがグリーン・ゲーブルスにやって来て、マシュウとマリラに育てられながら、親友ダイアナやライバルのギルバートと出会う物語。
最初は失敗ばかりのアンが、想像力と明るさで、周りの人と一緒に幸福を知ってゆきます。わざとらしさがないので、アンと一緒に笑ったり泣いたり、あなたもアンの友だちになったつもりで読んでみて。
感想文のポイント
- アンのどんな失敗が印象に残った?自分も似た失敗をしたことがあったら、アンをどう励ましてあげたいか、自分ならどうするかを考えてみてね。
- アンとダイアナの友情で心に残った場面は?あなたが二人の仲間になったら、どんなことをしたいかな?あなたのお友達の良いところ、好きなところを思い出しながら書いてみてね。
- アンが大好きなプリンスエドワード島の自然は、とても綺麗。お気に入りの場所に行けるなら、どんな場所に行ってみたい?
中学生(1~3年生)におすすめ:『アンの青春』(Anne of Avonlea)
角川文庫から出ている、河合祥一郎さんの新訳。こちらは大人まで対象にしている訳です。
角川文庫は、どの本も「どんな読者にも読みやすく」ということを意識して編集されているので、夏の感想文に迷ったら手に取ってみて欲しいです。
訳が読みやすく、読書を普段しない人にも抵抗がないと思います。
読書の好きな人なら、大人向きのところで紹介する文庫の方も見て、気に入った訳で読んでみてください。
どんなお話?
アヴォンリーの学校からクイーン学院を受験し、優秀な成績で卒業したアン。16歳。マリラのそばにいてあげるために、アンはアヴォンリーの学校で先生になることを選びます。
新米の先生、アンはどんな授業をしたのでしょうか?
グリーンゲイブルズに引き取られた、デイビーとドラのおかげで、賑やかな毎日。アンは奮闘中!ギルバートとの仲も、ちょっと変わってきて……。
感想文のポイント
- アンが成長したな、良くなったなと思うところはどこですか?逆につまらなくなったと思うところは?中学生になってからの、あなたの変化と重ねながら考えてみてください。
- アンは、新人の先生として頑張りますが、あなたならどんなふうに、生徒たちに接しますか?あなたが違う夢を持っているなら、アンはどんなふうにそれを応援してくれるでしょう?
- アンは、いたずらっ子のデイビー、おとなしいドラの面倒をみたり、マリラを助けたりと大忙しです。あなたが、「誰かのために頑張れる」のは、どんな時ですか?その逆は?アンとおしゃべりするつもりで考えてみてください。
- アヴォンリーの暮らしで、素敵だな、真似したいなと考えたところはどこですか?
高校生(1~3年生)におすすめ:『アンの愛情』(Anne of the Island)
村岡花子さん訳の新潮文庫版です。古い訳ですが根強いファンも多く、今も広く愛されています。お母様やおばあ様の世代は、これを読まれた方が多いはず。お好きだったところを聞いてみても面白いですね。
松本侑子さんの完訳版です。村岡さんの訳がテッパンだった中、松本侑子さんがアンを訳されたことは、ちょっとした事件でした。この本は二度目の訳で、とても読みやすく洗練されています。
ちなみに私は、新潮版は愛蔵書で、この文春文庫版は、読み始めたところです。大人の方がお読みになる場合、どちらかをお好みで選ばれるのが良いでしょう。
どんなお話?
アンは教師を辞めて、憧れのレドモンド大学に進学します。ギルバートやクイーン学院の親友も一緒で嬉しさいっぱい。
知らない街で初めて下宿をし、友達とシェアハウスをします。
アヴォンリーの幼馴染たちが婚約する中、アンは自分の将来や、愛する人は誰なのか、など、真剣に考え始め、自分を見つめるのでした。
感想文のポイント
- アンと親友たちの関わりをどう感じますか?あなた自身は、友情をどう捉えていますか?
- アンは大学で文学の学位を目指しますが、あなた自身はどんな将来を夢見ていますか?
- アンの悩みや、心の揺れを、あなたはどんなふうに感じますか?
アンの世界を親子で楽しむ!読書+αの夏の思い出を自由研究に
『赤毛のアン』シリーズは、読むだけで終わらせず、親子で「体験」することで、夏休みがもっと特別に!
アンの物語は、素敵なものがたくさん。
実は、私もお菓子を手作りしたり、すぐ作れなくても、レシピを読んでお料理の知識を増やし始めたのは、アン・ブックスにちなんだお料理本を、母と一緒に読んだのがきっかけでした。
今も叶えたいことの一つに、お料理教室に通って、まだ作れていないレシピに挑戦してみたい、というのがあります。
ぶきっちょな私でも叱らないでくれる、優しい先生がいるところに通って、習ったお料理を作ると、キッチンがいい香りに包まれて……。なんて、良いと思いませんか?
ともあれ、成績のお点が上がること以上に、家事を楽しいことだと印象付けてもらったことは、今も良かったなあと思っています。
アンのテーブルを親子で再現すれば、読書がもっと楽しくなりますよ!
『アン』のお料理たち
古い本で、出版元が鎌倉書房から白泉社に変わり、それも中古が多いのですが、是非図書館などで探して見てください。
3冊シリーズで、お話のダイジェストに沿って、お料理や手芸が紹介されています。
とにかくイラストが美しく、可愛い!ひと目で夢中になりますよ。
ボックスに入った愛蔵版は、私の宝物です。優しい語り口の文章も、魅力的。
こちらはまだ現役の本です。著者は、『アン』の生みの親、ルーシー・モード・モンゴメリのお孫さん。塗り薬をバニラエッセンスと間違って入れちゃった大事件のケーキや、アンがその味に感動したというチョコレートキャラメルのレシピなど、他の本では出ない事の多いレシピも載っています。
この本も、古書店さんや図書館ならまだ見つかると思います。お料理やライフスタイルの本に定評のある、文化出版局のロングセラーでした。
アンのお料理やお菓子は、凝ったものが多いので、これらの本を見て、デコレーションやテーブルセッティングの雰囲気、味の感じを大人の方と掴んで、ご自分の作れそうなレシピの本で作ったお菓子を『アン風』にアレンジして、スマホで写真を撮り、アルバムを作るのはいかがでしょう。
その時は、アンのお話の中から、好きな言葉を選んで、カードに書き、一緒に添えてみてください。カナダで当時流行していた、スクラップブック風に、イラストやシールを添えてみると、雰囲気が出ますよ。
『アン』を感じる手芸たち
キルトや洋裁の好きな人向け。
大きな作品に、急いでしなくても大丈夫。
簡単なパッチワークからやってみませんか?
お家にある可愛い端布を、100均の可愛いかごに入れましょう。
出来れば汚れないように蓋のあるものがいいですね。
裁縫箱と一緒にまとめ、参考にする本やアン・ブックスと一緒に、写真を撮ります。
これが自由研究のタイトル写真に。
次に、お家のランチマットの大きさを測って、型紙を作ります。
新聞紙で大丈夫ですよ。
大きなキルトやパッチワークは大変ですが、ランチマットやコースターなら挑戦できますから、本を参考に、作品のサイズをランチマットサイズに変えて、好きな布を使って作ります。本と同じ布でなくても、色の系統や雰囲気を揃えると、失敗しません。
出来たものをタイトル写真と一緒に箱に入れて、ディスプレイすると、ぐっとおしゃれに見えます。
アンのイラストを添えて、どんなふうにアンが使うかをイメージしたコメントを添えても楽しいですね。

© Canva / よみはぴ用無料素材
おわりに―
全部読みきれそうにない!というあなた。
安心してください。
夏休みが終わって、しっとりとした秋の季節にも、アンの物語は心に寄り添います。
アン・ブックスの読書やお料理、手芸もぜひ続けてみてくださいね。
お料理教室に行きたいって、初めて私も言葉にしちゃいました。
(あなたに言っちゃったら、勇気出るかなと思って(^^))
良いなって思ってるお教室を探せるところがあるので、
皆様にもシェアしますね。
こちらは、お料理教室のポータルサイトで、
私のように
「ぶきっちょでも叱らないでくれる、優しい先生がいるところ」
がよくて、個人先生に気軽に習いたい方にはピッタリ。
どうか上手く行きますように……。
読んだ本の世界を、自分の手で味わって、作って、楽しむ時間は、きっとかけがえのない思い出になりますよ。
本って、暮らしを変えてくれるきっかけにも、なってくれると思います。この記事があなたの、よいきっかけになれば嬉しいです。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
また『よみはぴ』に遊びに来てくださいね。
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